ウォーミングアップの科学とHSP


全く準備運動をせずに、急に走りだすと苦しくなり継続が難しくなります。
また、怪我や筋肉を傷める原因にもなります。
これは、能力を十分に発揮するためには、ある程度の準備時間が必要だということを意味しています。
筋肉の温度は、ジョギングなどの軽運動を10~15分することで、定常状態にまで高められることが知られており、実際の実験データでは、筋肉の温度を36.6℃から39.3℃まで上げることで、筋肉の最大ピークパワーが約16%増加したことが報告されています。
また、筋温を上げると筋肉の反応時間が最も高くなり、筋肉の柔軟性も増します。

筋組織の粘性を低下させ、筋収縮を円滑にすることにより、作業効率を高められることや、運動開始時の酸素摂取量や心拍数応答が促進されること、柔軟性が高まること、運動中の血中乳酸濃度の増加が抑制されることなどがわかっています。競技者にとって、ウォーミングアップは筋肉に潤滑油を入れて試合や練習に備える、欠かすことができない作業なのです。

ウォームアップの先駆的な研究者であるコペンハーゲン大学のAsmussenらは、ウォームアップ効果の根拠となる生物学的な現象を示しました(Asmussen E, 1945)。

「生物は高温により動きが促進される」

ここから運動のパフォーマンスにおけるウォームアップの重要性が認識されはじめました。

筋温における筋力と収縮速度の関係
ウォーミングアップ時の筋温の変化

ヒートショックプロテイン(HSP)とは、傷んだ細胞を修復する働きを持つタンパク質のこと。
また、免疫細胞の働きを強化したり、乳酸の発生を遅らせるなどの力も持っています。
つまり、カラダにとってはとてもありがたい存在で、HSPが増えることは「カラダを元気にする」ことにつながっているのです。
このヒートショックプロテインは、そういったサプリがあるわけでも食品があるわけでもありません。
元々、人間が持つ物質であり、「体を温める」ことによって効果が増すものです。
温泉での湯治は、温泉そのものが持つ効能のほかに、湯冷めしにくい温泉成分が、体を温め続け、このヒートショックプロテインの効果で免疫力が増すことがわかってきたのです。

この時、温度は42度が最適であり、それ以上の温度だと体に負担がかかり逆効果です。
増加したHSPは1週間ほど体内に残り、その力を発揮します。